東京地裁(令和3年)“吹矢の矢事件被告製品は、そのほとんどが吹矢協会と関係がある需要者により購入されたと認めることが相当である。そして、被告製品は、吹矢協会の関係者において吹矢協会の公認用具であることを理由として購入された割合が相当に高いと認められる。原告の製造販売する吹矢用具は令和2年(サイト注:令和元年の誤りと思われる)2月1日以降は吹矢協会の公認用具でなかったから上記の理由で購入された被告製品の需要の全てが原告の製造販売する吹矢の矢に向かうとは認められない。他方、原告の製造する吹矢の矢については、吹矢協会の公認がなくとも購入するとする者もいたことがうかがわれ、被告製品の需要が全く原告の製造販売する吹矢用具に向かわないとはいえない。被告は、原告の吹矢用具が吹矢協会の公認用具でないことを理由として令和2年(サイト注:令和元年の誤りと思われる)2月1日以降の被告の売上げについての推定覆滅を主張するところ、上記事情に照らせば、同日以降の利益については、5%の割合で損害額の推定が覆滅すると認めるのが相当である」、「被告は、吹矢協会と競合する団体が販売する吹矢の矢が、市場における競合品に該当するとして、特許法102条2項の推定が覆ると主張する。スポーツ吹矢については、複数の団体があるところ、団体ごとに吹矢用具に独自の規格を定めることがあり・・・・、吹矢の矢に、一般的な規格があるとは認められない。そして、原告は、吹矢協会の規格に従った矢を製造していた。被告も、・・・・吹矢協会の会員が使用する規格に従った吹矢の矢等を製造、販売することになったのであり、その販売開始からすぐに一定額の売上げがあり、被告製品はそのほとんどが吹矢協会の会員に対して販売されたと推認できる。また、吹矢協会の会員に対しては、原告及び被告が製造した矢以外の吹矢の矢が公認されたことはなく、その会員が、原告又は被告ではない製造者から吹矢の矢を購入することが多かったとは認められない。これらからすると、スポーツ吹矢の矢を製造している者が原告以外にいることを理由として、競合品があるとして特許法102条2項の推定が覆滅されことはない」、「被告が本件販売期間に被告製品を販売したことにより4150万3142円の利益を得たことは当事者間に争いがなく、そのうち令和元年1月までに2797万5785円、同年2月以降1352万7357円の利益を得たと認められるから・・・・、原告の損害額は、以下のとおり、2972万6848円となる(計算の過程で端数が生じた場合は四捨五入する。以下同じ。)」、「(平成1年1月5日から令和元年1月0日まで)2797万5785円」、「(令和元年2月1日から令和2年6月5日まで)1352万7357円×(1−0.5)=473万4575円」、「(合計)3271万0360円」と述べている。

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