知財高裁(令和3年)“油冷式スクリュ圧縮機事件被告は、甲1には、逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)の発生という技術的課題について記載も示唆もなく、甲1発明に、逆スラスト荷重解消のために非加圧の経路を設けるという動機付けはない旨主張する」、「甲2には『バランスピストンに油ポンプで加圧された潤滑・冷却シール用の圧油を作動油として供給している従来のスクリュー圧縮機においては、特に起動時、圧縮機の吸入側と吐出側の圧力差が大きくならないうちに油ポンプにより吐出された圧力の高い油がバランスピストンにかかることにより、ロータが吐出側に推され、スラスト軸受及びスラスト軸受抑え金などに過大な応力がかかるという課題がある』こと、すなわち、逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)が発生するという技術的課題が示されている。そして、上記のような逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)の発生の機序を踏まえると、当業者であれば、逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)の発生という課題は、特殊な構造のスクリュ圧縮機に特有のものではなく、スクリュ圧縮機一般に生じることを認識することができるものと認められ、甲1発明のスクリュウコンプレツサ(スクリュ圧縮機)にも生じることを認識することができるものと認められる。このように、甲1発明についても、逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)の発生という課題を認識できることから、そのような課題を解決するために、逆スラスト荷重解消のために非加圧の経路を設けるという動機付けも生じるものと認められる。そうすると、逆スラスト力(逆スラスト荷重状態)が発生するという技術的課題やその課題の解消について甲1に直接の言及がないとしても、そのような課題を解決するために甲1発明に非加圧の経路を設けるという動機付けが生じるものと認められる。したが
って、被告の上記主張を採用することはできない」と述べている。

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