知財高裁(令和3年7月20日)“核酸分解処理装置事件”は、「甲1には、ラジカル化のための触媒反応温度を一定に保ち、安定した濃度のMRガスを発生させる滅菌ガス発生装置を提供することを目的とすることについての開示があり、また、・・・・甲2には、甲2発明のホルムアルデヒドガス殺菌装置の構成を採用することにより、被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ所定の値に制御し、かつ、室内温度の上昇により室内の空気が膨張したような場合においても室圧を一定に保つことができるので、十分に保証可能な殺菌効果が得られるという効果を奏することの開示がある。そうすると、甲1及び甲2に接した当業者は、甲1発明において安定した濃度の殺菌ガスを発生させるとともに、十分に保証可能な殺菌効果を得るために、甲2記載の被殺菌空間内のホルムアルデヒドガス濃度、湿度、温度をそれぞれ所定の値に制御し、かつ、被殺菌空間の室圧を一定に保つための構成を適用する動機づけがある。そうすると、本件出願日当時、バイオハザード施設やケミカルハザード施設等、人体に有害な物質が室内に存在する場合には、室内から室外へその物質が漏えいすることがないように、室内を室外に対して陰圧に制御することや、人体に有害なオゾンガスを用いて室内の滅菌を行う場合には、オゾンガスが室内から室外へ漏洩することがないように、室内を室外に対して陰圧に制御することは、周知の技術であり・・・・、また、滅菌・殺菌のためにホルムアルデヒドガスを使用するに当たり、処理室内を処理室外の圧力に対して陰圧とした状態で使用する場合もあることは技術常識である・・・・から、甲1発明に甲2に開示された事項を適用するに当たり、被殺菌空間の状況や目的を踏まえ、こうした周知技術ないし技術常識を参酌して、甲2の被殺菌空間内の圧力を陰圧で維持することも当業者であれば容易に想到し得たものということができる。そして、甲1発明と甲2に開示された事項に周知技術ないし技術常識を参酌して適用した結果、被殺菌空間内を『庫内差圧を陰圧で』維持する構成としたことによって、当業者が予測し得ない顕著な効果を奏すると認めるに足りる証拠はない。したがって、甲1及び甲2に記載された事項と周知技術ないし技術常識を踏まえれば、相違点1のうち『暴露部の庫内差圧を陰圧で一定にする』という訂正発明2の構成についても、進歩性を認めることはできない」と述べている。 |