東京地裁(令和3年8月10日)“レーザ加工装置事件”は、「被告は、・・・・本件先行特許(当サイト注:本件出願1と内容が類似する)に係る出願経過等を本件発明1の特許請求の範囲の記載の解釈において参酌すべきであり、本件発明1の『改質領域』は、禁反言の効力により、多光子吸収によるものに限定解釈されるべきであると主張する。しかしながら、本件出願1ないしその原出願と本件先行特許に係る出願とは別個の出願であるから、・・・・本件発明1の解釈において本件先行特許に係る出願経過等を当然に参酌すべきとはいえない。また、・・・・本件先行特許に係る発明においては、その特許請求の範囲に『多光子吸収による改質領域』との限定がされたものがあったが、本件先行特許の審査の際の意見書・・・・における原告の主張は、引用文献にも多光子吸収による改質領域の記載があることを前提とした上で、多光子吸収によるという点以外の点において本件先行特許に係る発明と引用文献との相違点を主張していたものと認められる。そして、・・・・審決(当サイト注:本件先行特許に対する特許無効審判の審決)・・・・も、多光子吸収による改質領域であるか否かの相違点によって本件先行特許に係る発明の進歩性を肯定する判断をしたものではないと認められる。そうすると、本件先行特許について、改質領域が形成される原理を多光子吸収という現象によるものに限定したことによって、特許要件を満たすものとなったとはいえないから、仮に、本件発明1の解釈において、本件先行特許に係る出願経過等を参酌するとしても、構成要件1A、1D及び1Eの『改質領域』ないし『改質スポット』を多光子吸収によるものに限定すべきという結論には至らない。したがって、被告の上記主張は理由がないというべきである」と述べている。 |