東京地裁(令和3年)“レーザ加工装置事件「乙6発明1の課題は『破断開封アンプルを再現できかつ安全に開口する方法で破断開封アンプルの破断領域に所定の破断点を形成することにある。特に、破断開封が困難なアンプルを開封するときに生ずる傷の発生を避け、かつ、アンプルの開封で生ずるアンプル内の医薬品の損傷を妨げることを意図する』・・・・にあり、・・・・乙6発明1の加工対象物は、破断開封用アンプル等のガラス物体であると認められる。このようなガラス物体と本件発明1−1の加工対象物であるシリコンウェハとでは加工対象物としての性質が異なることは明らかであるといえるから、乙6発明1に接した当業者において、乙6発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換えることを直ちに動機付けられるとはいえない。乙6公報の・・・・記載からは、乙6発明1において、その加工装置を破断開封用アンプル以外にガラス管やガラス板の切断に適用し得ることについては開示があるといえるものの、これらの記載において、乙6発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換える動機付けとなる示唆があるとはいえず、その他、そのような動機付けとなり得る事情も認められない。これに対し、被告は、レーザ加工によってシリコンウェハを切断することは周知慣用技術であると主張するが、仮にそうであるとしても、当該周知慣用技術を乙6発明1に適用し、乙6発明1の加工対象物をシリコンウェハに置き換えることの動機付けについては、別途検討されるべきであって、周知慣用技術であるからといって、直ちにそのような動機付けが認められるものではない。したがって、相違点Bに係る本件発明1−1の構成を採用することは、本件特許1の原出願日当時において、当業者が容易に想到できた事項とは認められない」と述べている。

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