東京地裁(令和3年)“印刷された再帰反射シート事件「被告らは、本件明細書の記載及び出願経過によれば、本件発明は『外観が暗くなる』課題を解決するために『白色の有機顔料・・・・のうちの一以上の着色剤』を含有させることにより、色相を明るくするものと理解されるのであり、逆に色相を明るくしない場合も包含するなら、本件発明は課題を解決できる範囲を超えることとなると主張する。しかし、・・・・本件発明の課題である『色相の改善』とは『色相を明るくすること』に限定されているとまではいえないから、被告らの主張は、前提を欠くものであって失当である。また、仮に本件発明の課題である『色相の改善』が『色相を明るくすること』を意味するとしても、本件明細書の記載に照らせば、当業者においては、通常は本件発明の構成要件1E所定の白色顔料等の着色剤を含有すれば、少なくとも相対的に色相を明るくすることができ、本件発明の上記課題を解決できると認識できるというべきである。そして、仮に本件発明の構成要件1E所定の着色剤を含有しながら、絶対的に色相が明るくなっていない態様のものが含まれ得るとしても、一般的に、本件発明の技術的範囲に含まれ得る態様には、条件によっては本件発明の課題を解決できない場合も含まれることは通常のことであり、そのような態様を逐一列挙して、サポート要件に違反すると考えるのは相当でないというべきである。したがって、本件発明は、上記課題を解決できると認識できる範囲を超えるものでもないというべきである」と述べている。

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