東京地裁(令和3年8月31日)“印刷された再帰反射シート事件”は、「証拠及び弁論の全趣旨によれば、@原告は、本件訴訟の提起前に、被告らを含む3Mグループに対し、本件特許のライセンス料率5%を提案していたこと・・・・、他方で、米国3Mは、過去に第三者に提起した特許権侵害訴訟において、再帰反射シートに関する特許の実施料率は9%であると主張していたこと・・・・、米国3Mらは、過去に第三者に提起した訴訟において、ロイヤルティ料率20%での合意をしたこと・・・・、株式会社帝国データバンク編『知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書〜知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握〜』(平成22年3月)において、再帰反射シート(樹脂シート)が該当する『化学』の最小値が0.5%、最大値が32.5%、平均が4.3%であるとされていること・・・・、被告3Mジャパンらは、原告に提起した特許権侵害訴訟において、実施料率を10%と主張していること等が認められる。また、A本件発明は、・・・・再帰反射シートの構成全体に関わる発明であり、相応の重要性を有しているといえ、これらの構成を備えた従来技術は存在せず、この点についての代替技術が存在することはうかがわれない。そして、B本件発明は、被告旧製品の全体について実施されており、これによって向上される耐水性・耐候性は、需要者の購入動機に影響を与えるものであるから、本件発明を被告旧製品に用いることにより、被告らの売上及び利益に貢献するものと認められる。さらに、原告と被告らは、いずれも再帰反射シートの製造販売業者であり、競業関係にある」、「上記・・・・の諸事情を含む本件訴訟に表れた事業を総合考慮すると、本件特許権を侵害した被告らに事後的に定められるべき、本件での実施に対し受けるべき料率は、10%を下らないものと認めるのが相当である。したがって、本件特許権侵害について、特許法102条3項により算定される損害額は、・・・・被告旧製品の売上高の10%になる」と述べている。 |