東京地裁(令和4年)“角栓除去用液状クレンジング剤事件本件発明の課題は、界面活性剤を使用していないか又は界面活性剤の使用量がごく少量であってもタンパク質を抽出できる液状化粧品を提供することにあると認められるところ、・・・・本件明細書の特許請求の範囲にはオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量に関する記載がないから、特許請求の範囲の記載上、上記課題を解決するために必要となるオクチルドデカノール及び炭化水素の含有量について何ら限定はないと理解できる。しかるに、・・・・本件明細書においては、タンパク質を抽出する効果を奏する有効成分として、第2の高級アルコールであるオクチルドデカノールと、リモネン、スクアレン、及びスクアランからなる群から選ばれる1種類以上の炭化水素が特定されているところ、炭化水素の含有量がタンパク質抽出剤の全量に対して3体積%を下回る場合及び第2の高級アルコールの含有量が炭化水素に対して1体積%を下回る場合には、化粧品として実用的なものではないことが記載されており、かつ、炭化水素及び第2の高級アルコールの含有量が上記の数値を下回った場合に角栓を除去する効果を奏することができるか否かについては何らの記載も示唆もない。また、本件明細書には、本件発明に係る角栓除去用液状クレンジング剤によって実際に角栓を除去することができた旨の記載は見当たらない。これに加えて、角栓のある皮膚を対象とする実施例3において用いられた、角栓除去用液状クレンジング剤に相当する『第2のタンパク質抽出剤A』に含まれるスクアラン及びオクチルドデカノールの含有量は、それぞれ、全量の3体積%及び炭化水素(スクアラン)に対する1体積%を大きく上回るものである。以上によれば、本件発明の特許請求の範囲の記載は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が、本件発明に係る角栓除去用液状クレンジング剤のうち炭化水素の配合量が全量の3体積%未満又はオクチルドデカノールの配合量が炭化水素の1体積%未満の範囲であっても、角栓除去作用があり、前記・・・・の課題を解決できることについて、認識することはできないというべきであり、本件全証拠によっても、本件明細書の発明の詳細な説明の記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし上記の本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできない」、本件特許は特許法6条6項1号に違反するものであり特許無効審判により無効にされるべきものと認められると述べている。

特許法の世界|判例集