東京地裁(令和4年)“有料自動機の制御システム事件本件特許の出願当初の請求項においては、本件発明の構成として『有料自動機の動作を検知するセンサー』が含まれており、当該『センサーの検知信号に基づいて前記有料自動機の動作状態』についての監視結果を管理サーバへ送信することが規定されていた。ところが、本件補正により『有料自動機の動作を検知するセンサー』が本件特許の構成から除外されるとともに『ICカードリーダー/ライタ部と通信部とを有する装置』によって生成された『接続されている前記ランドリー装置が運転中であるか否かを示す情報』を管理サーバに送信するという構成に変更されたことが認められる。このように、本件補正に補正された事項は、管理サーバに送信すべき情報が、有料自動機の動作を検知するセンサーの検知信号に基づくものに限られることはなく、当該センサーの検知信号以外の情報に基づくものであっても、これに含まれるというものと解するのが相当である。これに対し、・・・・当初明細書等の記載内容によれば、有料自動機の動作を検知するセンサーの検知信号以外の情報に基づき、有料自動機が運転中であるか否かを判定したり、当該結果を推測したりする方法については、何ら開示されていないことが認められる。そして、当初明細書等の記載に接した当業者において、出願時の技術常識に照らし、上記補正された事項が当初明細書等から自明である事項であるものと認めることはできない。そうすると、本件補正は、当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであると認めるのが相当であり『願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内』においてするものということはできない。したがって、本件補正は、特許法7条の2第3項に違反するものと認められる。これに対し、原告らは、本件特許の審査段階において、本件補正が新たな技術的事項を導入するものと判断されておらず、本件異議申立ての審理においても訂正請求が認められているほか、当初明細書・・・・には、ICカードリーダー/ライタ部と通信部とを有する装置が接続されている前記ランドリー装置が運転中であるか否かを示す情報を生成し、出力するという技術内容が記載されている旨主張する。しかしながら、本件補正により補正された事項が当初明細書等に記載されておらず、これが自明である事項ということもできないことは、上記において説示したとおりである。そうすると、原告らの主張は、上記審査及び審理の経過を踏まえても、上記判断を左右するものとはいえない。また、原告らが指摘する上記当初明細書の内容は、・・・・電流センサーの検知信号に基づき有料自動機の動作状態を監視する構成のみを記載するものであり、センサーの検知信号によらずに動作状態を判定する構成を記載するものではないから、原告らの主張は、上記認定と異なる前提に立って主張するものにすぎない。したがって、原告らの主張は、いずれも採用することはできない」と述べている。

特許法の世界|判例集