知財高裁(令和4年2月9日)“オルニチン及びエクオールを含有する発酵物の製造方法事件”は、「エクオール産生能を有する微生物は、本件原出願日時点までにラクトコッカス20−92株以外にも複数発見されていたのであるから、それら既知のエクオール産生能を有する微生物を対象にして、当該微生物のオルニチン産生能を検討するという方法でも、オルニチン・エクオール産生微生物を得ることができる。このように既知のエクオール産生微生物を対象にオルニチン産生能を指標にしてオルニチン・エクオール産生微生物を得ることについて、格別の困難性はないといえる」、「次に、本件原出願日時点において、いまだ発見されていないオルニチン・エクオール産生微生物について検討するに、本件明細書には、・・・・『公知のスクリーニング方法』によりオルニチン・エクオール産生微生物を得ることができると記載されている。そして、・・・・本件原出願日当時、特定の性質を有する微生物をスクリーニングにより探索する一般的な手法は技術常識になっていたものと認められる。また、・・・・本件原出願日当時、エクオール産生微生物をスクリーニングする方法が知られていたこと及び当該方法は上記の特定の性質を有する微生物をスクリーニングにより探索する一般的な方法と特段異なるものではないことが認められる」、「そして、本件明細書・・・・や証拠・・・・には、ラクトコッカス20−92株・・・・をはじめとする各種エクオール産生微生物の培養条件が記載されているところ、そこに記載された培養条件が、菌株ごとに特殊な条件が設定されているとは認められないので、培養条件の設定に困難を要したとはいえないし、当業者は、上記スクリーニングを実施するに当たって、上記各証拠に記載された培養条件を手掛かりにすることができたと認められる。そうすると、エクオール産生微生物の探索に過度の試行錯誤が必要とされるということはできない」、「当業者は、過度の試行錯誤を要することなく、・・・・ラクトコッカス20−92株以外の菌株を用いて、本件訂正発明が規定する量のエクオール及びオルニチンを含有する食品素材として使用可能な粉末状の発酵物を得られるといえるから、本件訂正発明は、実施可能要件に違反するものではないと認められる」と述べている。 |