知財高裁(令和4年3月10日)“留置針組立体事件”は、「特許法29条の2所定の『発明』と『同一であるとき』の判断に当たっては、対比すべき複数の発明間において、その構成やこれにより奏せられる効果が全て合致するということは通常考えられないことであるから、後願に係る発明(後願発明)が、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明(先願発明)とは異なる新しい技術に係り、新たな効果を奏するものであるか否かという見地から判断されるべきであって、両発明に差異があっても、その差異が、新しい技術に係るものではなく、単なる課題解決のための具体化における設計上の微差であり、新たな効果を奏するものでなければ、両発明は技術的思想の創作として実質的に同一であるといえるから、上記『同一であるとき』に当たるというべきである」、「本件訂正発明において小径部の外周面に設けられた凹部は、原告が主張するような肉盗みのための凹部と断定できるものではなく、その形状、大きさ、深さ等は何ら特定されず、何らかの作用効果を奏するものとは認められず、他方、甲6においては、凹部の記載も小径部が厚肉であることやエアの混入を防止することなどに関する記載はないものの、逆に小径部の外周面に凹部を設けることを排除する記載や示唆もないこと、・・・・本件優先日当時、肉盗みにかかる技術は周知技術又は技術常識として知られていたことからすると、小径部の外周面の凹部の有無は、新しい技術に係るものではなく、単なる課題解決のための具体化における設計上の微差若しくは技術的に意味がない単なる外形上の微差であるというほかないから、本件訂正発明と甲6発明は実質的に同一であるというべきである」と述べている。 |