知財高裁(令和4年)“ソレノイド事件「日本国内で特許出願を行った国内企業・団体のうち上位となっている企業・団体(対象2031件)及び株式会社帝国データバンク保有データ信用調査報告書ファイル(約143万社収録)の中からライセンス契約を実施していると判断できる企業(対象975件)につき、重複データを削除した合計3006件を調査対象とし、 平成1年1月5日から平成2年2月5日までを調査対象期間として、技術分類別ロイヤルティ率のアンケート調査を実施した結果(有効回答は563件)によると、本件発明に最も近い技術分野である『精密機械』のロイヤルティ率は、最大値9.5%、最小値0.5%、平均値3.5%であった・・・・ことが認められる。また、・・・・実施料の決定要因の重要度としては、@当事者におけるライセンスの必要性、Aライセンス対象(特許権の評価)の重要度が高いことが挙げられている。なお、控訴人は、・・・・平成4年度から平成0年までのデータによる実施料率[第5版]データや平成0年3月0日言渡しの別件判決の説示を基にした主張もするが、平成7年から平成0年までの間の実施料率を問題とする本件では参考とならず、採用の限りではない」、本件発明の特許請求の範囲及び本件明細書の記載を総合すると、本件発明は『ソレノイド』を備えた制御弁の発明であるが、その特徴的部分は、@アッパーブレードの外側で取付孔に嵌合して取付孔の開口部を塞ぐ端部部材と、A取付孔と端部部材との間に配置されるシール部材の2つの構成を採用したことにあり、これらの構成によって、外部雰囲気(湿気や水等の流体)の進入が抑制されて、ソレノイドの耐食性を向上させるとともに、ハウジングの取付孔に挿入するだけで正確な位置決めができ、ボルトによるハウジングへの締結等も不要となり、取付性が向上するという効果を奏するものである。これに対し、相手方ハウジング部材に取付孔を設けてこの部分に容量制御弁を挿入するという技術は、本件発明の出願時には公知の技術である・・・・。また、シール部材の配置については、原告製品2のように、取付孔と端部部材の間のシール部材を設けることなく、腐食防止 のために鉄系材料にメッキを施して可変容量制御弁の耐久性を保つ代替技術・・・・があることから、ソレノイドの耐食性の向上という観点からいえば、当事者のライセンスの必要性の程度が高いとはいえず、特許としての重要度も高いとはいえない。そして、被控訴人が●●●社向けに作成した、原告製品2との比較を含む被告製品のプレゼンテーション資料・・・・には、重要設計項目として・・・・弁本体の機能や動作性等が重視され、本件発明の上記特徴的部分については何ら言及されていないから、被告製品における本件発明の実施の程度及びその価値は相対的に低いと言わざるを得ない。以上のような本件各事情を総合すると、・・・・控訴人と被控訴人は、可変容量制御弁の分野では国際的にシェアを分かち合う競業関係にあるといった事情を考慮しても、被告製品における本件特許の実施料率は2%程度であると認めるのが相当である」と述べている。

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