知財高裁(令和4年)“ソレノイド事件本件発明は『ソレノイド』を備えた制御弁の発明であるが、その特徴的部分は、@アッパープレートの外側で取付孔に嵌合して取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材と、A取付孔と端部部材の間に配置されるシール部材の2つの構成を採用したことにあり、これらの構成によって、外部雰囲気(湿気や水等の流体)の進入が抑制されて、ソレノイドの耐食性を向上させるとともに、ハウジングの取付孔に挿入するだけで正確な位置決めができ、ボルトによるハウジングへの締結等も不要となり、取付性が向上するという効果を奏するものである原告製品2(サイト注:本件発明の完全な実施品ではない)は、取付性の向上及び端部部材による外部雰囲気(湿気や水等の流体)の進入の抑制といった本件発明の作用効果を備えているといえるが、アッパープレードの外側で取付孔に嵌合して取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材を備えている(上記@を備える)ものの、端部部材と取付孔との間のシール部材(Oリング)を備えておらず(上記Aを備えておらず、腐食防止のために鉄系材料にメッキを施している。また、原告製品2は、自動車に搭載するソレノイドを有する可変容量コンプレッサ制御弁である以上、自動車メーカーとしては、外部雰囲気の進入の抑制というよりは、原告製品2の制御弁としての機能及び動作性に最も着目するものといえる。このように、原告製品2は、本件発明の従来技術の課題とされている、耐食性を必要とする構成部材にメッキ処理を施したものであることや、原告製品2は可変容量コンプレッサ容量制御弁であって、制御弁としての機能及び動作性の点に強い顧客吸引力があるといえるから、原告製品2の販売によって得られる限界利益の全額を控訴人の逸失利益と認めるのは相当ではないところ、原告製品2が備える機能等や顧客誘引力等の本件諸事情を総合考慮すると、事実上推定される限界利益の全額から5%の覆滅を認めるのが相当である」と述べている。

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