東京地裁(令和4年)“メタルマスク事件「乙2発明は『アライメントマークに充填された充填物質の離脱等が発生しがたく、該アライメントマークを確実にしかも容易に認識することができる印刷用マスク』・・・・等を目的とするものである。これに対し、乙0公報に記載された『電解マーキング法』の・・・・欠点は『得られるマーキング皮膜は被加工物の酸化物、或いは反応生成物に限られるため、物理的及び化学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり、皮膜の退色、離脱、溶出等の問題がある。』、『電解液の補充が多すぎるとマーキングパターンに滲みが発生する一方、少なすぎると掠れが発生し、・・・・明瞭さに欠けるというものである。そうすると、乙2発明に接した当業者が、離脱等の発生を防ぎ、かつ、容易に認識可能なものを目的とする乙2に対し、離脱等の問題があり、かつ、明瞭さに欠ける旨正面から明示的に指摘されている乙0公報の電解マーキング法を適用するとはいえないことは、明らかである。しかも、乙2公報は、アライメントマークとなる金属層を形成する方法として、電解めっき法等が好ましいとするのに対し、・・・・乙0公報は、電解マーキング法の欠点を解決するために電気鍍金(電気めっき)を採用することを記載するものである。したがって、当業者が、乙2公報で好ましい技術とされる乙2発明の電解めっき法に代え、あえて、乙0公報で電解めっき法に劣る技術と指摘されている電解マーキング法を採用することには、明らかに阻害要因があるというべきである。以上によれば、乙2発明に乙0公報の電解マーキング法を適用することには、その動機付けがなく、かえって阻害要因があることからすると、本件特許1の出願時の当業者において、これを容易に想到し得たものと認めることはできないと述べている。

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