東京地裁(令和4年3月23日)“メタルマスク事件”は、「乙12発明は、『アライメントマークに充填された充填物質の離脱等が発生しがたく、該アライメントマークを確実にしかも容易に認識することができる印刷用マスク』・・・・等を目的とするものである。これに対し、乙20公報に記載された『電解マーキング法』の・・・・欠点は、『得られるマーキング皮膜は被加工物の酸化物、或いは反応生成物に限られるため、物理的及び化学的に安定した黒色皮膜を得ることが困難であり、皮膜の退色、離脱、溶出等の問題がある。』、『電解液の補充が多すぎるとマーキングパターンに滲みが発生する一方、少なすぎると掠れが発生し、・・・・明瞭さに欠ける。』というものである。そうすると、乙12発明に接した当業者が、離脱等の発生を防ぎ、かつ、容易に認識可能なものを目的とする乙12に対し、離脱等の問題があり、かつ、明瞭さに欠ける旨正面から明示的に指摘されている乙20公報の『電解マーキング法』を適用するとはいえないことは、明らかである。しかも、乙12公報は、アライメントマークとなる金属層を形成する方法として、電解めっき法等が好ましいとするのに対し、・・・・乙20公報は、電解マーキング法の欠点を解決するために、『電気鍍金』(電気めっき)を採用することを記載するものである。したがって、当業者が、乙12公報で好ましい技術とされる乙12発明の電解めっき法に代え、あえて、乙20公報で電解めっき法に劣る技術と指摘されている電解マーキング法を採用することには、明らかに阻害要因があるというべきである。以上によれば、乙12発明に乙20公報の『電解マーキング法』を適用することには、その動機付けがなく、かえって阻害要因があることからすると、本件特許1の出願時の当業者において、これを容易に想到し得たものと認めることはできない」と述べている。 |