大阪地裁(令和4年3月24日)“空気調和機事件”は、「原告を含む従業者と被告との間で行われた協議の状況に不合理な点は認められない。これに対し、原告は、被告規程が知財部門により一方的に定められ、少なくとも原告が協議に関与していないなどと主張する。しかし、・・・・●(省略)●の過程において、被告の従業員に対する説明及び従業員からの意見聴取は十分に行われたものと見られることに鑑みると、被告規程●(省略)●が知財部門により一方的に定められたとの評価は当たらない。また、原告も●(省略)●質問等の機会を現に与えられていたことから、原告が協議に関与していないということもできない。そもそも、使用者等と従業員等との協議として、個々の従業員が規程内容の作成に個別的ないし直接的に関与する手続を担保することまでが求められているとは解されない。その他原告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する原告の主張は採用できない」、「被告規程の基準の開示の状況に不合理な点は認められない。これに対し、原告は、開示された基準では従業員が自ら実績補償金を算定できず、また、●(省略)●労力を要するため、開示の状況は不合理であるなどと主張する。しかし、被告において被告規程に係る基準が開示されていることに争いはない。その上、被告では、●(省略)●が開示されていたのであるから、従業員は、これと被告規程を照合すれば、実際の実績補償金の算定過程についても一定程度理解可能であったとうかがわれる。それ以上に、●(省略)●についてまで、基準として開示しないことをもって不合理とはいえない。また、●(省略)●基準の開示として不合理とすべきほどに特段の労力を要すると見るべき具体的な事情も見当たらない。したがって、この点に関する原告の主張は採用できない」、「最終的に、原告と被告との間で意見等の相違は解消されなかったと見られるものの、原告からの意見聴取の状況という観点からは、被告による原告からの意見聴取は実質的に尽くされたといってよい状況にあり、被告の一連の対応につき不合理ないし不誠実と評価すべきものはないというべきである。これに対し、原告は、十分な意見聴取や説明がなされなかったとして縷々主張する。しかし、その内容は、被告細則の解釈や発明に対する評価の程度に対する不満を述べるものであって、被告における原告からの意見聴取の手続自体が不合理であることを基礎付けるものではない。したがって、この点に関する原告の主張は採用できない」、「以上によれば、●(省略)●被告規程に基づく被告の原告に対する実績補償金の支払については、その定めたところにより相当の利益を与えることが不合理なものとは認められない。なお、原告は、●(省略)●被告規程における実績補償金の算定基準の内容面及びその適用の不合理性をも主張する。しかし、これをもって不合理とすべき具体的な事情は見当たらない上、前記認定に係る過程を経て上記基準が定められたことを踏まえると、これをもって不合理とは必ずしも認められない。この点に関する原告の主張は採用できない」と述べている。 |