東京地裁(令和4年)“携帯情報通信装置事件「原告は、平成4年1月9日頃、被告製品1などが原告の保有する別の特許に係る発明の技術的範囲に属するとする訴訟を提起し、当該訴訟の第一審判決は、平成5年8月2日に言い渡されているところ、・・・・原告は、当該訴訟の審理を通じるなどし、遅くとも前記判決の言渡日までには、被告製品1の具体的な構成について、本件訴訟の訴状で記載した程度には認識しており、被告が、被告製品1を販売していることを認識していたことも認めることができる。そして、・・・・被告製品1は、平成6年頃までに、その販売を終了していたことを認めることができるのであるから、被告による被告製品1の販売に係る不法行為に対する損害賠償請求権について、原告は、遅くとも同年頃までに、その損害及び加害者を知ったということできる。したがって、本件訴訟が提起されたものと認められる令和2年1月4日までに、当該損害賠償請求権に係る3年の消滅時効が完成していたことは明らかである「原告が、平成5年8月2日頃、被告製品2が販売されている事実を知っていたことは、当事者間において争いがない。しかし、本件発明は、スマートフォンなどの携帯情報通信装置に係るものであって、これが備える中央演算回路やグラフィックコントローラによるデータ処理手段や画像表示機能などを特定するものであるから、原告が、その頃において、当然に被告製品2の構成を知っていたと認めることはできず、これが本件発明の技術的範囲に属することを知っていたことを認めるべき証拠もない。そして、原告が、原告自身が認める令和元年1月9日頃以前に、被告製品2が、本件発明の技術的範囲に属することを知っていた旨の主張立証もない。したがって、被告による被告製品2の販売に係る不法行為に対する損害賠償請求権について、本件訴訟が提起された令和2年1月4日までに、その消滅時効が完成していたものと認めることはできないと述べている。

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