知財高裁(令和4年6月15日)“光源事件”は、「引用発明は、その構成から明らかなとおり、光変換層内に複数の緑色発光半導体ナノ結晶及び赤色発光半導体ナノ結晶(量子ドット材料)を含むものであるところ、周知文献2・・・・には、量子ドット材料の濃度を大幅に低下させることができると、ディスプレイの製作費用も量子ドット材料の数の減少に比例して大幅に減少させることができる旨の記載がある。そして、一般に、低コスト化 は、多くの技術分野に共通する技術的課題であるところ、量子ドット材料の濃度を減少させることにより低コスト化を図れるのであれば、当業者としては、できる限り量子ドット材料の濃度を減少させるよう動機付けられるのが通常である。ここで、引用発明の内容からも明らかなとおり、量子ドット材料は、光変換層内にあって、LED光源から入射される青色光を緑色光又は赤色光に波長変換するものであるところ、光変換層内の量子ドット材料の濃度を減少させつつ減少前と同等の波長変換を実現するために、量子ドット材料の波長変換の効率を高める必要があることは、当業者にとって自明の事柄である。そうすると、引用発明においてコストの低下を追求する当業者にとっては、量子ドット材料の波長変換の促進のため、散乱剤を添加するとの本件技術を適用する動機付けが十分にあると認めるのが相当である」、「原告は、引用文献には、当業者において低コスト化を図るために量子ドット材料の使用量を少なくしつつ十分に波長変換がされるようにしようとする旨の示唆等は全くないと主張するが、低コスト化が多くの技術分野に共通する技術的課題であることは、引用文献を始めとする刊行物等に明示の記載や示唆がなくても自明のこととして認められる事柄であるから、原告の上記主張を採用することはできない」と述べている。 |