大阪地裁(令和4年月9)“自立式手動昇降スクリーン事件「@本件訂正後発明1の効果は、簡素な構成により、スクリーンをスムーズかつ安定良く支持することが可能となり、従来のように一方のリンク機構のみが大きく伸縮作動されて変形や損傷等のトラブル発生を招くことがなく長期間に渡って良好に使用することが可能となること、A本件訂正後発明2の効果は、収納姿勢から使用姿勢にスクリーンを切り換える場合に、スライド部材を位置調節することが不要となること、B本件訂正後発明3の効果は、部材点数の削減化を図ることが可能となることにある・・・・。被告製品は、本件各訂正後発明の技術的範囲に属すると認められるところ、本件各訂正後発明は、可搬式の自立式手動昇降スクリーンに関する発明であり、同スクリーンを選択する需要者にとって、本件各訂正後発明の効果は、同スクリーン選択の動機となり得るものである。特に、@は、設置、収納及び使用(映写)のいずれの場面においても寄与する、手動昇降スクリーンにとって基本的な機能に関わるものであって、需要者に対して相当程度の顧客誘引力を生じさせるものといえる原告製品と被告製品は、少なくともECサイトや商社を通した販売ルートが共通している。これに対し、被告は、アスクル及びジョインテックスカンパニーに登録したユーザーは、そのカタログに掲載された商品を検討するのみで、他の商品を比較検討することはないところ、同カタログには原告製品が掲載されていなかった旨主張する。しかし、原告製品や競合品の価格や大きさ、耐久性等に照らすと、日常的に使用する消耗品とは異なり、アスクル等のユーザーが、原告製品や競合品のようなスクリーンを購入する場合、必ずカタログに掲載された商品のみから購入する商品を選択するとは認め難く、相当数のユーザーは、ECサイト等で他の商品と比較検討するなどして、商品を選択し購入すると考えるのが相当である。したがって、被告独自の販売ルートの点については、侵害行為と原告の損害との相当因果関係に全く関係がないとまではいえないものの、その影響は相当程度限定的に解すべきである被告は、市場には可搬性があり脚で支える映写用スクリーンや被告製品と正面外観が類似するといった被告製品と競合するスクリーンがかなり多く存在する旨主張し、多数の証拠・・・・を提出する。これらの証拠からは、可搬式自立式のパンタグラフ式手動昇降スクリーン(パンタグラフの形状が明らかでないものを含む)であって三脚式でないものを販売する業者は、原告及び被告以外にも複数社存在することが認められるものの、商品数が多いとまではいえず、しかも、それらのスクリーンのうち少なくとも2本のアームで枢支連結されているパンタグラフを有するものの数はさらに限定されると解されるから、競合品が多数存在するとまでは認められない「以上の事情を総合的に考慮すれば、一定数の競合品の存在による推定覆滅がなされるものの、一方で、競合品に該当する商品数が多いとはいえないこと、被告製品の売上に対する本件各訂正後発明の貢献の程度は大きいと認められること、被告独自の販売ルートの点は限定的な影響に留まり、その他に推定を覆滅すべき具体的な事情は見当たらないことから、本件においては2割の限度で損害額の推定が覆滅されるものと解するのが相当であると述べている。

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