最高裁(昭和3年48日)は実用新案法6条によって準用される特許法1条所定の判定が行政不服審査の対象となり得るかどうかについては、法律に別段の規定がないので、この問題は、行政争訟の一般原則に従って解決するよりほかはない。ところで、行政不服審査法が行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に対して不服申立を認めているのは、この種行為が国民の権利義務に直接関係し、その違法又は不当な行為によって国民の法律上の利益に影響を与えることがあるという理由に基づくものである。従って、行政庁の行為であっても、性質上右のような法的効果を有しない行為は、行政不服審査の対象となり得ないと解すべきである」、これを判定についてみるのに、判定は、特許等に関する専門的な知識経験を有する3名の審判官が公正な審理を経て行なうものではあるが、本来、特許発明又は実用新案の技術的範囲を明確にする確認的行為であって新たに特許権や実用新案権を設定したり設定されたこれらの権利に変更を加わえるものではなく、・・・・判定に法的効果を与えることを前提とする規定を設けていないこと、他方、所論のごとく判定の結果が特許権等の侵害を理由とする差止請求や損害賠償請求等の訴訟において事実上尊重されることがあるとしても、これらの訴訟に対して既判力を及ぼすわけではなくして証拠資料となり得るに過ぎず、しかも、判定によって不利益を被る者は反証を挙げてその内容を争うことができ、裁判所もまたこれと異なる事実認定を行なうのを妨げられないことに思いをいたせば、それは、特許庁の単なる意見の表明であって、所詮、鑑定的性質を有するにとどまるものと解するのが相当である」、されば、特許法1条所定の判定は、行政不服審査の対象としての行政庁の処分その他公権力の行使に当る行為に該当せず、従ってまた、実用新案法6条により右特許法の規定を準用してなされた本件判定も、行政不服審査の対象となり得ず、これと同趣旨に出た原判決・・・・の判断は、正当であって所論法令違背の違法はなく、この点の論旨(サイト注:上告人の主張)は、理由がない」と述べている。

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