東京高裁(昭和2年17日)“酢酸ビニルの製法事件反応の化学方程式が示されても、果してそのとおり反応が進行するかどうかは、一般的には実際に実験して確認してみなければわからないのであって、化学が実験の科学といわれる所以もそこにある。したがって化学反応の発明が完成したとするためには、たとえば公知化合物から公知の単純な反応でそれと類似の化合物を製造する方法のような予測可能な場合を除いて、一般的にはその化学反応の実在を裏付け、作用効果を確認しなければならないと考える。化学反応の実在を裏付け、その作用効果を確認するためには、実際にその反応を行なってみなければならず、発明を記述する明細書には、かような実験が行われたことを証する資料が記載されなければならない。実施例はそのための最も適切な資料であり、必ずしもそれに限定されるわけではないが、少くともこれに代り得るものがあることが必要である」と述べている。

特許法の世界|判例集