東京高裁(昭和6年8)“球面スパイラル溝付軸受の加工方法事件特許法第132条第3項の規定によれば、特許を受ける権利を共有する者がその共有に係る権利について審判を請求するときは共有者の全員が共同して請求しなければならないところ、拒絶査定を不服として提出された本件の審判請求書の請求人の名称欄には『日本精工株式会社取締役社長A』とのみ表示されていた」、「原告は、特許法第4条但し書に基づいて『日本精工株式会社』をもって共有者両名の代表者とする旨の『代表者選定届』及び『代表者選定証』がすでに提出されているが、これに定められた代表者は民事訴訟法第7条の規定に基づき定められた選定当事者と同じく審判請求手続についても共有者全員を代表するものとするのが特許法第4条の法意であるから、審判請求書に『日本精工株式会社』のみが表示されていても、これは当然、共有者たる原告及び原告補助参加人が共同して審判請求をなしたものと解されるべきであって、特許法第132条第3項の規定に違反する不適法な審判請求とはいえない旨主張する。しかしながら、特許法第4条は、2人以上が共同して手続をしたときは、同条本文に掲げる手続(拒絶査定に対する不服の審判の請求等)以外の手続については各人が全員を代表するが、同条但し書に基づいて『代表者選定届』を提出したときは、同条本文に掲げる手続以外の手続についてはその代表者が全員を代表することを定めたものであって、原告が主張する如く代表者を定めて特許庁に届け出たときは、審判の請求等同条本文に掲げる手続(原告のいう特別手続)についてもその代表者が全員を代表できる旨を定めたものではない。このことは、同条の規定の構成を特許法第9条の規定と対比してみても明らかなところである。したがって、拒絶査定不服に対する審判の請求等特許法第4条本文に掲げる手続に関しても、同条但し書による代表者が民事訴訟法第条の規定による選定当事者と同じ地位を有するものと解することはできない」と述べている。

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