東京高裁(昭和9年7)“耐衝撃性ポリスチレン事件本件特許の明細書の特許請求の範囲中における1、4ポリブタジエンの中に含まれるビニル含有量の0%以下という0%がいかなる方法によって計算された0%であるかについては、特許請求の範囲においてはもちろん発明の詳細な説明中にも、これを示唆するものは何も見当らない。・・・・ビニル含有量が0%であることを客観的に確定する方法は、本件特許発明の出願当時見当らなかったのであるから、いかなる測定方法に従って測定した0%であるということすら記載されていない本件特許発明においては0%という割合を決めるに由なく、その点において既にこれを実施することが不可能であったものといわざるを得ず、本件特許権が権利として成立しているとの理由をもって、本件特許権に基づいて他人にその権利を侵害することの差止め及び侵害を理由とする損害賠償の請求をすることはできないものといわなければならない。本件特許発明においては、出願人はすべからく・・・・ベルギー特許第551851号明細書、・・・・英国特許第873046号明細書におけるごとく、赤外法におけるポリブタジエンのシス、トランス及びビニルの、自分で計った吸光係数を記載して、ビニル成分の0%とはこれによる0%として0%の基準を明らかにすべきものであった(なお、測定機器の特定及び測定方法を記載することも必要であろう。)」と述べている。

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