東京高裁(昭和61年12月2日)“光の伝送装置事件”は、「原告は、上位概念で表現されているものの中から下位概念で表現されているものについて分割して出願するような場合には、原出願の明細書等の補正は必要ではない旨主張するが、本願は、原出願の発明における透明固体材料の中から透明ガラスを区分して分割出願の対象としたものであり、単に上位概念の発明から下位概念の発明を抽出したものにほかならないことは・・・・明らかであり、このような場合には、二重特許の発生を防止するため上位概念の発明中に下位概念の発明を含まないような形にする補正をする必要があるのであって、これを不必要とする原告の主張は理由がない。また、原告は、出願の分割に当たって、右のような原出願の明細書の補正が必要であるならば、原告に対し、右補正を命ずべきである旨主張するが、明細書に記載された技術内容に関する手続補正は、出願人が自己の意思に基づいて自発的に行うべきものであって、命令に応じて行うべきものではなく、出願の分割の場合であっても、分割出願に係る発明と分割後の原出願に係る発明とが同一であることを免れさせるために、特許庁側が出願人に対して、原出願の明細書の手続補正を命じなければならない法的義務は存しないのであって、原告の右主張は理由がない。したがって、本願の発明は、原出願の発明と同一であり、本願は、特許法第44条第1項に規定する二以上の発明を包含する特許出願の一部を分割した新たな特許出願に該当せず、分割は不適法であって、同条第2項の出願日の遡及を認めることはできないとした審決の認定、判断に誤りはなく、これに反する原告の主張は理由がない」と述べている。 |