東京高裁(昭和63年10月11日)“液中の微小物体観察装置事件”は、「本件審判請求書において、『請求の理由』については、『詳細な理由は追って補充する。』とのみ記載され、実質的な理由が記載されていなかったこと、審判長は審判請求人たる原告らに対し右の不備について補正を命ずることなく、また、原告らも何ら理由の補充をしないまま審理が終結され、審決がなされたことは、当事者間に争いがない。ところで、審判を請求する者は、特許法第131条第1項本文の規定により、同項第1号ないし第3号に掲げる事項を記載した請求書を提出しなければならないが、拒絶査定不服の審判請求についても同項第3号の『請求の趣旨及びその理由』における『理由』が記載されているというためには、その制度の趣旨からみて、拒絶査定を不服とする実質的な理由が記載されていることを必要とし、単に『詳細な理由は追って補充する。』という程度の記載では、この要件を満たしていないというべきである。したがって、本件審判請求書には特許法第131条第1項第3号に定める要件を欠いた方式の違背があり、その不備は補正される可能性のあるものであるから、審判長は原告らに対し、相当の期間を指定して、請求書について補正を命じなければならず、原告らが右指定期間内にその補正をしなかったときは、決定をもって審判請求書を却下しなければならなかったものである(特許法第133条第1項、第2項(サイト注:現3項))。したがって、右手続きを経ることなく、実体審理を行い、『本件審判の請求は成り立たない。』とした本件審決には、審判手続きに瑕疵があるというべきである」と述べている。 |