東京高裁(昭和3年7)“時計用文字板事件原告らは、右拒絶査定に至る出願手続の過程を通じて、共同出願人である原告ら両名が意思を同じくして権利の保存に努力を重ねてきたこと、原告河口湖精密株式会社が原告シチズン時計株式会社と共同して審判を請求する意思を有していたことが原告ら両名の間で明確に確認されていたことを理由に、原告シチズン時計株式会社が共同出願人である原告ら両名のために審判を請求したことは疑う余地がない旨主張する。しかし、実用新案法がその1条によって、審判を請求する者は『審判事件の表示』、『請求の趣旨及びその理由』と並んで『当事者及び代理人の氏名又は名称及び住所又は居所・・・・』を記載した請求書を特許庁長官に提出しなければならない旨を規定した特許法131条1項と共に『特許を受ける権利の共有者がその共有に係る権利について審判を請求するときは、共有者の全員が共同して請求しなければならない』と明記した特許法132条3項の規定を準用していることに鑑みれば、実用新案法は、実用新案登録を受ける権利の共有者が共同出願人である場合、これら共有者が拒絶査定不服の審判を請求するに当たっては、共有者の全員それぞれが審判を請求する意思のあることを、審査手続におけるそれまでの経緯と離れて改めて、請求書に表示する要式行為によって明示することを求めたものであり、これによって何人が審判請求人であるかを一律に確定しようとしたものであると解される。この趣旨はまた、実用新案法5条2項が準用する特許法4条本文が原則として複数当事者の相互代表を認めながら、その例外となる場合の1つとして拒絶査定不服審判の請求を規定していることにおいても現われている。したがって、本件において、共同出願人である原告河口湖精密株式会社は、実用新案法の規定するところに従い、要式行為である審判請求書の提出により本件審判を請求する意思を表示すべきであったのであり、・・・・仮に原告ら両名の意思が原告らの右主張に沿うものであったとしても、これをもって、原告河口湖精密株式会社が原告シチズン時計株式会社と共同して本件審判を請求したということはできない」、「審判請求書の請求人の欄の記載・・・・を原告ら両名に補正することは審判請求書の要旨を変更するものであることが明らかである」と述べている。

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