■■ 解説(4項) ■■(»全体表示)
(1)趣旨
政令で定める処分を受けるために特許発明を実施できなかった期間の分だけ特許権の存続期間を失うことになると苛酷だからである。
(2)解釈
(2.1)「政令」
特許法施行令2条である。
(2.2)「特許発明の実施をすることができない期間」
政令で定める処分を受けるために必要な試験を開始した日(特許権の設定の登録前から開始した場合にあっては、特許権の設定の登録日)から政令で定める処分を受けた日の前日までである(»判例1、判例2、判例2)。
【補足】政令で定める処分を受けようとする者は、特許権者に限らず、実施権者であってもよい(»第67条の7第1項2号)。
(2.3)「延長する」
特許発明のうち政令で定める処分を受けなければ実施できなかったものと用途の組合せについてのみ特許権の存続期間を延長することである(»第68条の2)。
【補足1】組合せが複数ある場合は、それぞれについて延長登録出願をして、それぞれについて特許権の存続期間を延長しなければならない(例えば、特許発明Aは政令で定める処分を受けなければ用途イと用途ロに実施できないものであって政令で定める処分を受けるために用途イに実施できなかった期間が5年であり用途ロに実施できなかった期間が3年であり、特許発明Bは政令で定める処分を受けなくてもいずれの用途にも実施できる場合は、特許発明Aと用途イ、特許発明Aと用途ロの組合せについて特許権の存続期間の延長登録の出願をすれば、特許発明Aの用途イへの実施についての特許権の存続期間は特許出願日から25年となり、特許発明Aの用途ロへの実施についての特許権の存続期間は特許出願日から23年となり、特許発明Bについての特許権の存続期間は特許出願日から20年のままとなる)。
【補足2】特許権の存続期間が延長された場合、延長に無関係の請求項(補足1の例においては、特許発明Bのみが記載された請求項)についても延長分の期間の特許料を納付しなければならないが、特許権は請求項ごとに放棄できる(»第185条)ので、延長に無関係の請求項を延長分の期間の特許料を納付する前に放棄することによって、無駄な特許料の納付を回避できる。