■■ 解説(4項) ■■(»全体表示)
(1)趣旨
従業者の職務発明への意欲を向上させるためである。
【補足】以前は金銭(対価の支払い)に限られたが、柔軟な対応を可能とするために、平成27年の法改正によって金銭に限らず経済上の利益(例えば、昇進や昇格、ストックオプションや有給休暇の付与)であればよいこととなった。
(2)解釈
職務発明の発明者である従業者は次のときに相当の利益を受ける権利を取得することである。 @特許を受ける権利を使用者に取得(発生や承継)させたとき A特許権を使用者に承継させたとき B専用実施権を使用者に設定したとき C仮専用実施権を使用者に設定した場合において専用実施権が設定されたものとみなされたとき
【補足1】あらかじめ(職務発明の完成前に)した定めによる場合に限られず、職務発明の完成後にした契約による場合も同様である。また、明示による場合に限られず、黙示による場合でもよい(»判例)。
【補足2】相当の利益を受ける権利の消滅時効は、一般の債権と同様に、行使可能であることを知った時から5年か、行使可能時から10年か、いずれか早いほう(令和2年3月31日以前に発生した権利にあっては、平成29年の民法改正前の消滅時効である行使可能時から10年)である(»民法166条1項)。したがって、利益が金銭であって支払時期(後払いや分割払い)の定めがある場合(部分)は、早くてもその時期が起算点となり(»判例1、判例2、判例3、判例4、判例5、判例6、判例7、判例8、判例9、判例10、判例11)、そのような定めがない場合(部分)は、早ければ相当の利益を受ける権利の発生時となる(»判例1、判例2、判例3)。
【補足3】外国における特許を受ける権利も含めて使用者に取得させた場合は、外国における特許を受ける権利についても同様に(本条4項〜7項を類推適用した)相当の利益を受ける権利を取得する(»判例1、判例2、判例3)。