■■ 解説(3項 ■■»全体表示

(1)趣旨

(1.)新規事項の追加の禁止

 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面に記載された事項の範囲外の事項(いわゆる新規事項)を追加されると、先願主義に反することになるからである

(1.誤訳訂正書を提出してする場合を除き」

 外国語書面に記載された事項の範囲外の事項(いわゆる原文新規事項)の追加の禁止という制限が別途にある»9条6号、113条5号、123条1項5号)からである。

(1.6条の2第2項の外国語書面出願にあっては、同条第8項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面。第4条の2第1項及び第4条の3第1項において同じ。)

 審査や審理の負担を軽減する(誤訳の訂正を目的とする補正以外の補正がされるたびに外国語書面を参酌して外国語書面に記載された事項の範囲内であるか否を判断しなくても済むようにする)ためである。

 補足1提出時の翻訳文(明細書、特許請求の範囲、図面とみなされる)や誤訳の訂正を目的とする補正後の明細書、特許請求の範囲、図面が外国語書面に記載された事項の範囲内であると判断した場合は、それらのいずれか(いずれも外国語書面に記載した事項の範囲内であるので、いずれを基準としてもよい)に記載された事項の範囲内であるか否かのみによって(すなわち、外国語書面を参酌することなく、その後にされる誤訳の訂正を目的とする補正以外の補正が外国語書面に記載された事項の範囲内であるか否かを判断すればよいことになる

 補足2誤訳の訂正を目的とする補正以外の補正が提出時の翻訳文や誤訳の訂正を目的とする補正後の明細書、特許請求の範囲、図面に記載された事項の範囲外である場合は、特許出願の拒絶理由となる»9条1号)が、特許の取消理由や無効理由とまではならない»113条1号、123条1項1号)。

(2)解釈

(2.願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(第6条の2第2項の外国語書面出願にあっては、同条第8項の規定により明細書、特許請求の範囲及び図面とみなされた同条第2項に規定する外国語書面の翻訳文(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面。第4条の2第1項及び第4条の3第1項において同じ)に記載した事項の範囲内

 特許出願時における当業者の技術常識を参酌すれば、次の書面の記載から自明な事項の範囲内である»判例1判例2判例3判例4判例5判例6判例7判例8判例9判例判例判例判例判例判例判例判例判例判例判例判例判例判例
 @外国語書面出願以外の特許出願にあっては、
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、図面
 A外国語書面出願にあっては、次の書面のいずれか
 a.提出時の翻訳文(明細書、特許請求の範囲、図面とみなされる)
 b.誤訳の訂正を目的とする補正後の明細書、特許請求の範囲、図面

 補足1自明ということは、補正をしなくても明白なことであるので、明細書と図面については、実際には有益な補正はできないことになる(先願主義に鑑みれば当然のことであるただし、先行技術文献情報»6条4項2号)の追加に限っては、自明でなくても新規事項の追加とはならない»特許庁「特許・実用新案審査基準」第W部第2章3.3.(1一方、特許請求の範囲については、願書に最初に添付した明細書や図面に記載された事項の範囲内で有益な(拒絶理由を解消する)補正が可能である

 補足2記載を削除する補正であっても、特定の発明を丸ごと削除するような場合を除き、新規事項の追加となる可能性があることは、記載を変更や追加する補正の場合と同様である